ディスクリートパワーモジュール II  


   K1056、J160のディスクリートパワーモジュールは、ねじ切りしたアルミブロックに装着
できるので、そういう発展性を見込んで作りましたが、このような軽量シャーシでもすばらしい音が
しています。

  そのことがちょっと不思議なので同じシャーシで新MOSのK1529、J200で作ってみます。

 今回は2個づつ購入しました。ペアではありません。

  例によって音のことは全く考えていないので、回路も思い切ったものにします。



  PHILLIPS LHH A700のコピーですが、LHH A700の音が悪いといっているのでは
ありません。製品の評価は高かったようです。

  元回路ではドライバーに相当電流を流していたようですが、このシリーズでは電流は節約です。

  定数は作りやすいように勝手に決定します。勿論DC計算で決定しますが、信号のスイング
レベルやゲインなどのAC関係も多少は考慮にいれています。

  振幅位相特性を各周波数で計算して求めるというような人はまさかいないと思いますが・・・。

  シミュレータの方は日本の部品モデルが少なく、そのため精度が悪いのが困りものですが・・・。

 参考


  よく考えてみると、C2259は持っていなかったのでした。


  ペアマッチング

  コンプリペアは何があっていればよいのでしょうか。
  それは同じ飽和特性であれば、伝達特性が一致していれば良いことになります。



  このサンプルではJ200の方がバイアスが深いようですし、温度特性も違っています。
それぞれこういう傾向でばらつくはずですから、母数をいくら増やしても良いマッチングを得る
ことは望み薄です。

  静特性(ドレイン特性)を見てみます。


  DSに8V以上かければ完璧な飽和特性を示しています。gmの若干の違いが読み取れます。

  コンプリとしてはなかなか良く似た特性だといえるでしょう。

  よく言われているように、厳密に特性を合わせる必要があるのはパラにするときであって、コンプリ同士
ではだいたい合っていればあとは回路がなんとかしてくれるわけです。(NFBがある場合)





  今回は終段無帰還ですから、ドレイン電流に対するVgsの非直線性が補正されずにそのまま出てきます。

  何か楽しみのような・・・。




  この石、アンプ一台分で2400円以上のお値段です。贅沢といえば贅沢ですが、ハイファイを目指すなら
このくらいの志がないといけません。


  アンプの音に関する若干の予想

  1 パワーアンプ終段の直線性については各素子ともかなり問題がある。

  2  各素子のもつ歪みについて、

     a)V−FETはMOS−FETより決定的に小さい。(ドレイン出力での比較)

     b)MOS−FETどうしで少しづつ違う。

     c)バイポーラとMOS−FETではかなり違う。

  3 発生する歪みは、それぞれ固有の音のくせをもたらし、そのくせはNFBで
    なくすことは不可能。(もしかすると歪がもたらしているのではないかも)

  4 ZDR、ODNFなどでなくせるかどうかはまだ未知数。

  5 測定値を見る限りでは、問題ないレベルにすることは可能。しかし、歪みを同じように
    下げたとしても聴感で同じにすることは出来ない。

  6 聴いて違いがわかるかどうかはすべてスピーカーにかかっている。



  この場合はK1529とJ200というコンプリをソースフォロアで使うわけですから、2のbにあるような
違い(K1056などとの)が現れてくるわけです。



  バイポーラも大電流では定電圧性を失っていますし、FETはそもそも定電圧性はありません。
これを見ると、FET同士の特性の違いの大きさ、K1529がFETの性質を持ちながらバイポーラに
近づいていることが見てとれます。

  誤差の大きさについては、明らかにバイポーラ有利、FET不利といえると思います。
(誤差が大きいからといって歪が大きいとはいえない)








  オーバーオールのNFBは、電磁制動の補助と、クロスオーバー歪み、スイッチング歪み、フォロア変換
歪み(負荷の重さで変化)の処理の役割を受け持ちますから、ほんとは荷が重すぎるのです。

 これだと多分、NFBは比較的素直な負荷の電圧増幅段の非直線性を補正しているだけでしょう。

  そのかわり終段で発生する問題は全部残りますから、例えばB級バイポーラだと絶対不可能だし、
MOSのなかでも一番問題が少なそうなこのペアでかろうじて成立しているのでしょう。

  自分のgmで電磁制動をかけ、フォロア変換歪みをもろ出しにしてFETが独演会をやっているような
ものです。

  生ならではでのハプニングが期待できるのではないでしょうか。

  聴くに堪えないか、楽しめるかはすべてFETの器量にかかっています。


  変更

  初段を定電流化しました。





  試聴履歴

左ch 右ch   音質
終段無帰還

初段抵抗バイアス

終段無帰還

初段抵抗バイアス

明るさ、素直さが感じられる。電源ハムがのるので、

実用的でない。

終段無帰還

初段定電流

NS流実装

終段無帰還

初段定電流

NS流実装

ハムは皆無となる。音は面白みが無くなっている。

パスコン追加

ポリエステル、BG

左のほうが歪み感がなく奥深く展開するのだが、何か不満感

がある。

右はボリューム感があり、いやな音もしばしば出る。

パスコン追加

ポリエステル、OS

同上 OSにしてみる。耐圧が25Vなので、±20V電源でしか使えないが、

音は良さそう。

NFBオーバーオール化  透明化、音と音の間があいて見通しがよくなる。
NFBオーバーオール化 帯域電流負帰還化 左は透明だが固く、メカニカルな音。右はグラディエーション豊かで、聴きやすい

音。

     
     
     
     



  独特な音がしますが、リー・リトナーのフェスティバルが聴きやすいです。概してアコースティックギター
はOKです。

  音にうぶげがあるならそれが全部残っているように聴こえます。逆に言えばNFBをかけるとそれらが
無くなるということですが。

  Zoを計ると、右3、左11Ωと意外に大きく、そしてばらついています。


最終的に帯域電流負帰還化したので印象をまとめておきました。


  このくらいになると、LM1875よりはるかに上を行く音がしますから、モジュールシリーズのリファレンスとして
しばらくは君臨することになります。