2015年の音楽生活9



エゴノキが実をつける。次は沙羅の木だがその時はもう夏だ。


映画 ねじ式 (1998)

まず若き頃のつげ義春の生活が描かれる。美人の妻がいる。貧乏のため二人は別居生活に
なるが妻の浮気などがありブロバリンで自殺を図る。この辺から夢日記や漫画の素材が
出てくるようである。もっきりやの実写版は漫画の雰囲気とは違うなと思った。配役を
選べばもっと似せられたかも。主人公の性格は実存的と言うよりは素のままのちょっと
ひねくれた男に見える。ねじ式の場面では主人公が実存モードで彷徨するのだが出てくる相手
がさらなる実存モードで来るので掛け合いがシュールだ。「なるほど君の言わんとすることが
だいたいわかりました。君はこう言いたいのでしょう。『医者はどこだ。』」というセリフ
を言う男の配役が興味の的だったが期待通りではなく残念だった。


ドラマ リセット 本当のしあわせの見つけかた (2012)

40代の人生に疲れた元同級生3人組が17歳に戻って人生をやり直す。専業主婦だった知子
(鈴木保奈美)は女優になり夢を実現する。水商売の晴美(坂井真紀)はお大金持ちと
結婚しセレブに、薫(高島礼子)は知子の夫と結婚し共稼ぎで楽しそうだ。二日後の決算日
に元の人生に戻るかどうか決めなければならない。実情は薫の夫は無職、晴美の息子は
虐待児、知子も女優として行き詰まりつつあった。結局三人はやり直した人生を不幸と断じて
元の平凡な人生に戻って行く。女性にとってキャリアと子育てのどちらが人生における満足度
が高いかは永遠のテーマだがこのドラマの知子は子育ての方を取った。後の二人は消極的な
意味で元の人生を選んでいる。


映画 藁の盾 (2013)

性犯罪者清丸の首に10億円の懸賞金がかけられる。まるでガルシアの首だが法治国家
日本でのことなので滑稽な事が起こってくる。警視庁の男女のSPが選任されて護送の任務を
帯びる。清丸に対する攻撃は個人的なものが散発するが全て未遂に終わる。機動隊による
集団護送を試みるがバレバレになり断念、今度は意表をつく形で新幹線を使うがこれも
位置情報がバレバレだ。密通者がいるのか。侵入してきた暴力団のような人たちと銃撃戦
になる。ここで能書きの多いバカな刑事が殉職する。女のSPも不可解な行動を取る。今犯人を
殺せば小さい子の命が助かるという発想はお涙頂戴の浪花節そのものである。本来駒のように
使い捨てされるはずのSPが浪花節を歌い最後まで生き残るという本末転倒な映画の予感が
する。

とうとうSPと残った刑事で列車をジャックする挙に出るのだが、列車は止められ歩きに
なる。GTAのゲームみたいに車を奪い任務を続行する。GPSを持っていたのは買収された刑事
だった。SPと清丸だけになるが今度は警察のスナイパーから逃げる展開だ。タクシーの中で
サイコパスのはずの清丸が親思いの発言をするというシナリオの間違いかと思われる言動も
あった。これはどう整合性を取るのか。

最後に男のSPが狂ったようになり清丸を殺すか殺さないかの瀬戸際まで行く演出があったが
殺しはしなかった。警官隊が見守る中、SPが職務を超えて懸賞金をかけた蜷川という老人を
説得するというのも何だかなあと思った。


映画 ピンポン (2002)

卓球で世界制覇を目論む高校生ペコ。ペコの親友で卓球の天才と周りから見られている
スマイル。たかが卓球に青春をかける気はさらさらなく人生の暇つぶしとまで言うスマイル
だが大会で試合をするうちに・・・・。

こういうのを最近考えたことがある。テニスならたまーに海外の試合に出て賞金を獲得し
ついでに旅行して帰る。テニスは賞金が高いのでこのような事が可能なような気がするが、
スマイル君なら卓球でできそうだ。

練習を重ねて次の試合に挑む二人だがペコは膝の故障で棄権しなければならない時試合に
挑み宿敵を破る。決勝戦はペコとスマイルの対戦になる。結果はペコの勝利。訪れた未来は
プロになったペコ、アマチュアで子供を指導するスマイルというものだった。才能が支配する
のではなく意志が未来を作る話だった。現実ならどうだろうか。



人は物語を作りその中に幸福を見出す生き物のようだ。いつか白馬の騎士がと言うのは
典型例だし、鴎外の雁に出てくる美女も妄想の中に幸福を見出すが帝大生もそうなることを
無意識の内に感じていたようだ。

さて運良くその物語が実現したとして夢見心地なのは最初のうちだけで、日常生活は苦しい
ことが多く義務から解放される時にだけリラックスするというパターンだ。しかも大きな幸せ
は得た瞬間から失った時の大きな不幸がピタッと付いてくるのに気が付いていない。福は失い
にくいものである事がかなり重要だ。財産は失いやすいが教育は失いにくいという原理は昔か
ら応用実践されている。

結局幸福感は常に物語を作り続け、失うかどうか細心に計算しつつやっていかないと中々
感じられないものでマンネリズムに埋没した我々には厳しいものがあるかもしれない。沿線
地図で志郎がこだわったのはこのあたりなのだろう。


映画 長江 (1981)

上海の空撮映像と街の様子、4階建ての東方紅という汽船が出てくる。これから峨眉山までの
長い旅が始まる。あまりに長いので楽山大仏から見ることにした。大仏の足の上でさだが生徒
たちと記念写真を撮っている。続いてさだは登山者の出で立ちで報国寺に入る。後はロープウ
ェイに乗らずひたすら山頂を目指す。来光とチベットの山々を望み映画は終了した。あれ、
華蔵寺は?と思う。報国寺もワンカットだけだったし何か理由があるのかも。

戻って最初からゆっくり観ると、南京の項で長江にかかる橋の事が出てくる。この当時で
橋は3本しかないそうだ。レナ川は今でも橋は無い。長大な川は難儀だなと思う。武漢には
二つ目の橋がある。交通の要衝で英国、仏、ドイツ、ロシア、日本が租界を作ったという。
そこでスパイとして暗躍したのがさだの祖父であるという。

宜昌では1986年完成予定のダムの工事中の映像が出てくる。その上流の三峡はまだ健在
な頃である。三峡からは深い渓谷になり農業などが出来ない。奥地と平地の間の交易で
生きてゆくしかなくこれが都市国家の始まりであるというのが岡田英弘氏の卓見だ。
長江文明の中流域のものについて調べてみると稲作や陶器に見るべきものがあるようだが
どうやら黄河文明の龍山文明(都市の形成、青銅器)にやられてしまったようだ。

豊都(鬼城)では道教の寺院に寄り取材を試みる。寺院は道教の総本山だったが文化大革命
で破壊され荒れ果てていた。何人かの道士がひっそりと住んでいた。道教は不老長寿、錬金術
を求めた民間信仰であるとさだは言っている。免罪符を購入して次の目的地に向かう。

重慶では観光客のようにケーブルカーに乗り街を歩く。3000年の歴史を持ち人口の多い重慶
だがさだは当時の炭鉱の様子を取材している。国家機密なのだろう。労働者の発言が管理され
ていた。さだは郊外の農村に向かいその様子をいろいろとフィルムに収めている。夜行列車に
乗りさらに奥地へと向かう。SLファンには嬉しい映像もある。

大足に至るがこの先の青海省へは行けなそうな状況になっている。チベット族が多く国家
機密も多いのだろう。さだは今は世界遺産になっている大足石刻を見て回る。ここから長江の
最初の一滴が見たいよなと何度もつぶやくようになる。とうとう金沙江を遡る許可を得ること
ができなかったようだ。さだ側の政治力の不足か。北京との交渉で足止めを食らっている様子
が出てくる。怒りながらさだは岷江を遡ってゆく。

成都に入り買い物をし成都動物園のパンダを見る。後は楽山がすぐそこにある。


映画 男はつらいよ 寅次郎と殿様 (1977)

枕の寸劇は寅次郎が鞍馬天狗で刺客に取り囲まれるが見事な剣さばきでやっつけるという
もの。その時出てくるのは生き別れた妹だ。美人の妹が寅次郎の生きる力になっているの
だろう。旅先の鄙びた駅のホームで夢から覚めた寅次郎は飛ぶように東京に帰ってくるが
たまたま端午の節句であり甥の満男の為に小型の鯉のぼりを土産に買ってくる。

何時ものように仕掛けが幾つかあって不条理劇が展開する。プライドをズタズタにされた
寅次郎は「それを言っちゃあおしめえよ。」という名台詞を残し柴又を出て行く。

考えてみると特技を持つ寅次郎は旅行がしたくなれば目的地にフラッと行きそこで生活の
資金を稼いで旅に疲れると里に帰る。里には養父母と妹夫婦がいて歓待してくれる。孤独では
無いしこのままでは老後が心配だが何とも楽しそうな生き方であると言える。

寅次郎は偶然出会った四国の元殿様の屋敷でご馳走になり、一泊して帰るのだが寅次郎が
東京出身ということである頼みごとをされる。殿様の死んだ長男の嫁マリコ(真野響子)を
探して欲しいというものだった。寅次郎はフラフラになりながら東京中を一軒一軒探して回る
のだがマリコから寅次郎を訪ねてくる。マリコとは偶然旅先の旅館で知り合い仲良くなって
いたのだった。狂喜する殿様だが念願が叶いマリコと対面を果たしたあと四国に戻って行く。

もうこの頃から結婚は諦めたような寅次郎だが殿様がマリコと結婚してくれるよう頼む
手紙をよこしてくる。驚くとらや一同だが寅次郎にとっては生唾を飲み込むような展開で
ある。結局マリコの意向を無視したこの提案はマリコに相手がいることが判明した瞬間に消滅
する。この時の寅次郎の表情は森繁ほどの深みがなかった。

現代の文芸作品たる男はつらいよシリーズには日本の面影がふんだんに実写映像として
入っており今回も心の保養になる感じがした。


TBS 白熱ライブ ビビット

息子を三人ともスタンフォード大学に入れたアグネスチャンを取材して教育の秘訣をボード
にまとめていた。そこに書いてあったのは「IQは8歳までにだいたい出来上がってしまうんです
ね。だから、8歳までに色々なモノに触れさせて好きなことをやらせてあげればIQがどんどん
高まってきます。」というものだった。 アグネス家では子供に絵本を読み聞かせたり逆に父に
読んであげるような事をさせていたようだ。

これは7年ごとの記録という番組の結論である「7歳までに人は作られる。」とも、私の
「小2までに脳を活性化すれば後はトントン拍子に進む。」という理論ともほぼ一致している。
こういうことをすらっと言うアグネスは素のままの正直な人ではないかと思った。


映画 陽だまりの彼女 (2013)

前振りでは意味のよくわからない回想シーンが音楽とともに提示されタイトルとなる。
イケメンの主人公浩介は都心のオフィスに勤める会社員。早速エレベーターに同乗した美人
社員に振られる。アタックが遅すぎたようだ。藤沢にいた頃の中学の同級生真緒がクライアン
トとして現れ、懐かしがる間も無く浩介はミスを連発する。恋愛の力学のような話がどんどん
出てくる。中学時代のマーガリン事件はいじめに遭っていた真緒を浩介が助けるというありふ
れた話だった。当時から妖精のようだった真緒はキュートな美人に成長していた。ただ声が
ダイワハウスのCMの声に聞こえるのがマイナスだろう。仕事もうまく行きデートを重ねる二人
だが江ノ島デートの時彼女の実家に寄った浩介は継父から衝撃の事実を告げられる。

浩介は見切り発車のように彼女と婚姻届を出してアパートで同居を始めた。少しづつ彼女に
変化が現れる。どんな宿命が姿を現してくるのだろうか。実は真緒は昔浩介が助けた子猫が
化けたものだという話になってくる。だんだん化けきれなくなって消えてしまうらしい。真緒
はその前に南の島に新婚旅行に行きたいという。私本当は猫なのという前にちょっとした事件
が起こり猫の受け身が浩介にばれてしまう。翌朝真緒が消えて関係者の記憶も全部消えた。
浩介はしばらく記憶があったので江ノ島の謎の婆の所に駆けつけて真実を知る。

やはり消えてしまう幸福は消えたときの悲しみが大きすぎる。実は 全部人間の話で純愛だっ
た最愛の彼女が死んでしまったという悲劇をファンタジーに置き換えて思い出にするという
仕掛けならばなかなか面白い。猫が化けているなんて気持ち悪いし悲惨だ。


映画 そのときは彼によろしく (2007)

智史(山田孝之)は水生植物の店を経営している。今日も顧客の水槽を見て回る。店に戻る
ともう夜でアルバイト募集に応募してきた若い女性(長澤まさみ)が待っていた。彼女が誰で
あるかはおいおい明らかになる。小学生の頃から水生植物が好きだった智史は水辺で水草を
採集していると対岸にあった廃車のバスに花梨と佑司が居て友達になる。花梨と佑司は施設
で暮らす身寄りのない少年少女である。誕生パーティーの日に智史が花梨にプリズムをプレゼ
ントする。大きくなった花梨はそのプリズムを持って智史の前に現れたのだった。

全然気付かずにいた智史だがプリズムの事を思い出し花梨だとわかる。トップモデルで女優
だった花梨は引退して、昔の約束通り水草屋の看板娘になりにやってきたのだがなにか暗い影
がある。故郷で画家になっていた佑司は交通事故で意識不明になる。付き添う花梨も変わった
持病があり発作が起きれば死ぬまで眠り続けるという。智史は医師である自分の父親からその
事実を告げられて花梨の所へと急ぐが花梨はちょうど発作が起きて眠ってしまうところだっ
た。佑司は不思議な事に意識を回復し花梨の告白が書かれたスケッチブックを智史に見せる。

結局花梨は奇跡的に目覚めるのだがやはり綺麗事に過ぎない。スペイン映画のトークトゥー
ハーの場合妊娠で目覚めるという不道徳的なものも出てきた。一方これは夢の中で帰り道を
智史の父に教わるという大甘な設定になっていた。孤児が真っ直ぐな人生を歩めるかどう
か、初恋が至高の愛になり得るのかどうかというような大きな問題もスルーされていた。


映画 白夜行 (2011)

質屋の主人が殺害され捜査が開始される。ガイシャの足取りから刑事が母子家庭の家を
訪ねる。そこに美少女の雪穂がいた。母親の文代とその彼氏がまず疑われる。刑事は思索を
めぐらせるが彼氏が交通事故で死に、文代はガスで死んでいた。上層部は超スピードで被疑者
死亡のまま立件した。この時点で真犯人が他にいるのではないかという含みを持たせている。
現場にいた第一発見者の小学生も怪しい。

時は流れ女学生の雪穂は裏千家の教授の家庭に養子として入っていた。いじめられっ子の
江利子と友達になる。美少女の雪穂といじめっ子の都子は不良グループに目を付けられてい
る。ある夜二人は都子がレイプされて転がっている現場を目撃する。彼女らの証言により
加害者は不良グループとされ逮捕される。だけどこれは冤罪のように見える。雪穂は生徒会長
に立候補したいと言う。有吉佐和子の悪女についての公子に重なる部分がある。美人で有能で
男を利用してのし上がってゆくという女だ。

事件から8年後被害者の息子亮司は家を出ていかがわしいバイトをしていた。小学生の頃は
真面目な少年だったようだが今はどす黒い。雪穂と江利子は同じ大学に進学し社交ダンス部
に入る。江利子は不器用ながら部長の一成に気に入られだんだん垢抜けてくる。暗部を知る
男、松浦勇が雪穂の前に現れる。恐喝をしたようだが詳細はわからない。その後白骨死体にな
り発見される。松浦を追いかけていた刑事の笹垣は焦るばかりである。江利子は郵便局員に
レイプされ一成とは破局になり、雪穂が部長を奪った形になる。でも元々部長は雪穂を狙って
いたのだ。一成はお金持ちの御曹司でこのあと雪穂とでき婚する事になる。

亮司は栗原典子と同棲していた。典子は亮司の事を愛していたが、亮司の心はよくわから
ない。笹垣刑事はコーヒーに青酸カリを盛られるが飲まずに助かる。盛ったのは亮司である。
その青酸カリで典子が自殺する。理由はよくわからない。部屋を調べた笹垣刑事は亮司の切り
絵を見つけ当惑する。亮司の母親が経営するスナックで飲んでいた笹垣刑事は雪穂が児童買春
させられていた事を聞き出した。

雪穂は一成を引きこもりにした後、自分を嫌っていた一成の妹を誰かにレイプさせ支配下に
置く。元刑事になった笹垣が一成を訪れる。一成は妻の身辺を探偵に探らせるが探偵は何者か
に毒殺されていた。もうここまで来れば雪穂の別働隊が亮司だろうなと思える。事件の合理的
な解説が笹垣からなされる。

その日笹垣は亮司を追い詰めて自殺させてしまう。何故死んだのか。

検討して行くと周囲の大人が業を全開にし過ぎな気がする。子供も全部落とし前を付けよう
とせず自分とは関係ないくらいに思っていれば良かったのでは。刑事はいやに誠実で執念深
いが何にもできずに終わってしまった。


NHK BS ムハンマドたちの絶望 ”アラブの春” 後のエジプトを生きる (2015)

2012年エジプト北部の町ポートサイドのサッカースタジアムでの暴動の様子。客席で火の手
が上がっており悲鳴が聞こえる。暴動後のインタビュー。カイロのチームのサポーターが逃げ
まどっていたという証言がある。上からつき落としていたという証言もあるし、押し出された
だけという証言もある。結局74人が死亡し1000人が負傷するという大惨事になった。検視の
結果死因は圧死と転落死のみであるという。現場には治安部隊と警察官がいたようである。

サポーターと警官が逮捕され、裁判で21名に死刑判決が下った。この判決により暴動が起き
死者が26人も出ている。死刑判決を受けたムハンマド・デスーキ(28)がインタビューに答え
る。モルシ大統領の発言に市民が怒り狂って暴動がおきたのだという。同じく判決を受けた
モフセン・カッス(30)。裁判なんてまっぴらと逃げ回っている。棺桶を担いだ群衆の暴動の
様子が映っている。この時治安部隊が発砲したのだろう。

革命以降生活は苦しくなり治安も悪化したという。ムバラクの方が良かったという意見が
多い。モフセンも国外に逃げ出したいと考えるがつてがない。ムハンマドは音楽で身を立て
ようとギターと作曲をやっている。バンドを作りプロテストソングを録音して活動中だ。
弁護士の尽力で裁判は白紙に戻され審問が行われることになった。裁判は1年以上続き進展が
ない。どうやら司法当局が先延ばししているらしい。2014年5月の選挙でシシ大統領が誕生
する。まだ判決のめどは立たない。ムハンマドにしても車を乗り回しながら別れた恋人の話を
しているし、モフセンも店を経営していたりと裕福な感じがする。統治はいい加減なようだが
国民はしたたかに生きているようだ。





Pー5が完成。音は良かったがこのままでは熱暴走する。


マイケル・サンデル 白熱教室 科学と幸福の話をしよう (2015)

これまで道徳的ジレンマの議論してきたが、今回はテクノロジーの進歩と道徳的判断について
議論を行う。生徒は優秀な理系の学生たちだ。

練習問題 デートの相手をネットで見つけた人は挙手

挙手はエバひとり。エバ(ハーバード大学)はネットを利用して付き合う相手を見つけたと
いう。これはたまたまうまくいった例か。

大学講師マッキンレーは人工知能で3万人の中から自分の相手を探す。プロフィール情報を
もとに相性度のいい女性を選びデートを繰り返しとうとう婚約者を得た。だが相手はアジア系
のメガネっ子だった。

人工知能を用いた結婚についての意見。マサヒロ(東工大)役に立つのではないか。シュウ
(復旦大学)フィーリングが重要。ハル(東大)賛成。タイラー(ハーバード大学)人間の
主体性が大事。

親が勧める相手と結婚するか、人工知能が選んだ相手と結婚するか?リエコ(東工大)親。
マサ(ハーバード大学)お見合いに変わる文化になりうる。ファン(復旦大学)感情は別物。
コナー(MIT)機械が選んだ方が正しい。ハルク(東大)人間の直観に従うべき。リョウ(
東大)膨大な候補から選べるコンピューターを信頼。オウ(復旦大学)親は考えが古く客観的
でない。

ま、この辺はシーナ・アイエンガー教授が仕事とパートナーは数値でなく直観で選ぶほうが
長持ちする、自分を多くの選択肢に投げ入れるなと言っているではないか。サンデルは自分の
意見は無しである。

カリフォルニアのサンタクルーズ警察。コンピューターが予測するエリアをパトロール
する。場所ごとの犯罪確率を計算しそこへ向かう。そこには確かに犯罪者がいた。

これに対する 賛成、反対は五分五分である。サンデルは映画 マイノリティリポートに言及
する。機械が教える犯罪者を犯罪をする前に逮捕する話である。これには反対者も多い。
スカイラー(MIT)不確定性に言及。マサユキ(東大)権力の濫用に言及。マサ(ハーバード
大学)対テロならいい。アンビタ(MIT)権力側がデータを持ち、それによる逮捕権を行使
するのは反対。

人工知能ワトソン(IBM)は人間の質問に答える。医療機関、金融業界で使われている。
弁護士事務所では人工知能が探し出した資料を人間が選ぶ。 オックスフォード大の論文
によると20年以内に現在の仕事の半分が人工知能に取って代わられるという予想がされて
いる。ここでサンデルは哲学論文の採点が人工知能に出来るかどうかを問う。賛否両論を
述べさせてペンディングになる。出来るかどうかはやって見なければわからない。文学も
詩も美術も人工知能が扱えるかもしれないができないという意見もある。

後編ではサンデルに誘導され、理系の学生が医学研究、爆薬、ドローン、核兵器を例に出し
て研究の倫理について意見を述べている。科学自体は中立だという楽観的な学生もいるが悲観
的な学生もいる。

サンデルは遺伝子工学の話題に移る。遺伝子操作で筋肉を増強する研究は老化予防に使える
だろうがドーピングにも使おうという人がでてくる。アスリートの遺伝子操作について倫理的
可否を問うてみると概ね学生は反対であった。ロビン(東工大)は賛成意見を述べた。自然の
摂理、公平性を論拠に反対意見が展開される。アンビタ(MIT)も賛成。醒めた人もいるもん
だ。人間は不完全だが不完全ゆえに尊いという議論が出てくる。進歩を続けることが人類の
責務という考え方も出てくる。

クローン技術で亡くした家族を再生する事に賛成の学生が6人。反対意見が次々と出てくる。
まあここは神の領域だから踏み込んで行くのは躊躇われるだろう。次にデジタルクローン
の試みが出てくるがこれは蓄音機の延長だと思う。不死の世界への入り口かどうかはよくわか
らない。

興味深い議論が出たところでサンデルが締めくくる。テクノロジーは成長するが人類を蝕む
可能性がある。テクノロジーの倫理を議論することが未来を作る。最後に人間性、人間関係、
フェアな社会というキーワードをペラペラ喋って終了した。

(つづく)