MOS-FET トランスリニアバイアスアンプ  

  ここは初心に戻ってこの方式のアンプを作り音を確かめてみる。K1529はK1056とは違って伝達特性が
指数関数に近いFETなのでこの方式が成立するのだと思う。

  さらに調べてゆくと2SC5200ではIcが2Aを越える領域では直線になっている。中信号の2sc3422でも
200mAからは直線である。これでは必ず相方がカットオフする。







  一方2SK1529の場合はかなり指数関数に近い特性を示している。



   バイポーラ出力段ではエミッタ抵抗を排除してもトランスリニア効果は期待できない。HCAで
行くべきである。さらに言えば大電流時の直線性はいいのだからカットオフさせないバイポーラ
トランジスタはSITのような音になるような気がする。最近そのことをよく経験する。



  今回はCA2のシャーシと電圧増幅段をそのまま使うことにする。これで出力段のソース抵抗とおさらばできる
わけであるがそのかわり出力をショートすると石が危ない。上條氏の場合二作目以降にはプロテクション回路が
装備されるようになっている。









  連休を利用して選別を行った。NchとPchでIdが近い組み合わせが出ればいいかと思っていたが甘かった。
ランダムに組んだ場合こうなる。Vgsを考慮して組んでもなかなか近づかないのではないか。



  VgsとgmはId=5mAのときの値。



  道はまだまだ遠い。


  この中で一番マシなので片ch組んでみる。これで駄目なら諦めよう。

  慎重に確認してテストしてみると調整できた。Io = 190mAになったがだんだん減少してくる。安定している
感じだ。音はまだなんとも言えないがスピーカーのそばで聴くと新回路の方にきめの細かさとgmの大きさが感
じられる。



  古いアンプから2ペアと今のアンプの片chから1ペア抜き出して測定したらうまく3ペアとれた。連休中なので
第一号機が完成してしまった。



   音は上條氏のコメントでは筆舌に尽くし難い無味乾燥なものという表現だったがやっぱり聴いてみないと
わからないものだ。きめが細かくさわやかで雑味がないこの音はむしろ美音のほうになるだろう。美音なだけで
なく情報量も最高だ。SITアンプもこれには負けている。もっと早く作るべきだったかもしれない。

(つづく)