2015年の音楽生活10 



沙羅の花が咲いたのだがまだ梅雨の半ばだった。



映画 つげ義春の蒸発旅日記 (2013)

主人公(実存モード)が汽車に乗っていると日常モードの乗客が入れ替わり立ち代り現れて
は消える。少女が現れて話しかける。汽車を降りるときには消えていた。主人公は渓谷に建つ
わりと立派な温泉旅館に入る。 電話で自分の漫画の愛読者を呼び出して何とかしようとする。
現れた静子という女はおかっぱ頭の可愛い娘だった。実はバツイチで身の上話を繰り出して
きたが帰っていった。その間主人公は女の裸を想像している。主人公はどうやら饒舌な女は
嫌いなようだ。でもそこには目をつぶって結婚しようと思っている。


女は一週間後に泊まりに来るという事になった。主人公はパチンコをしたりタバコを買っ
たりしていたが短い旅に出る。近くに精神病院があり逃げ出した患者二人と川を見に行く。
ハヤがたくさん泳いでいた。時計が出てきたり映像はベルイマン風だがヒプノシスの雰囲気も
ある。

主人公は蒸発したがさまよいつづける気はなく何処かの女と結婚して拘束されたいと考えて
いるのだ。だが理想的な相手がすぐ見つかるわけでもない。同宿の老人と酒を酌み交わす。
老人は雨で流された先祖の墓石を探し続けているという。

宿に帰ってみると関西ストリップの出張ショーが来ていた。遊び慣れているのか主人公は
つまらなそうな顔をしてチップをバナナの下に置く。岩風呂に入りながら観光を続ける。
お寺を見ていると住職が話しかけて来てラッキョウを振る舞う。修行僧になりこんな所に
骨を埋めるのもいいかと考える。

蓮の花を見ていると狐の夫婦が手招きしてきた。お呼ばれすると男から襲撃を受けるが主人公
は女の着物の帯を解こうとする。女と交接していると追っ手が御用だとやってくる。窓から川
に飛び込む。今度は同じ女がストリップの代役をやり主人公に豊満な肢体を見せる。でもこれ
らは全部妄想だ。次の日シューベルトのアベマリアの音楽で女がウェディングドレスでストリ
ップをする。二人はねんごろになり一緒になろうと言う。翌朝女は置き手紙を残して消えて
いた。

静子が元気そうにやって来る。今晩は泊まれるそうだが色々話しているうちに兄の形見を
置いて帰ってしまった。やはり会ってすぐ結婚という訳にはいかなかったようだ。主人公は
東京に帰って行く。妄想の中で結婚したしストリップも見たしまあいいかというような
エンディングが流れる。



安冨歩 満洲暴走 隠された構造 (2015)

満洲については事実が見え隠れしているが壮大な隠蔽があるのだと僕は思っている。本書は
その幾つかに触れているようだ。例を挙げると、森林と草原と湿地帯だった満洲が大豆畑の
平原に変わってゆく様が映像に残ってはいないこと。国土が改造される前はデルスウザーラで
見れるような地だったのだろう。また戦争犯罪では命令した上官たちが転属、異動などで逃れ
ており、関係した下の者が死刑になっているという構図があげられる。

それと長春にソ連軍が入ってきた時の街の様子なども知りたいところである。ソ連軍
がいっぱい撮っているのではないだろうか。

著者は暴走の理由づけとしてPFB(ポジティブ・フィードバック)を持ち出している。まあ
これは男の特性でもあるので彼女のサボればいいという提言はいいかもしれない。満洲国が
成立したのは朝鮮半島利権のおかわりだという見方があるがその事はあまり書かれていなか
ったようだ。



映画 そして父になる (2013)

実にきれいな現代日本が出てくる。そして登場人物のルックスもいい。だがどこか空疎な
感じも漂う。野々宮良多(福山雅治)は後で苦労するより頑張って私立小学校にという考え
だ。一人息子の慶多はお受験を頑張る。ある日夫婦は病院に呼ばれ赤ちゃん取り違えを告げ
られる。息子は手塩にかけているがまだ6歳だ。妻のみどり(尾野真千子)も悔やんでいる。
相手側の夫婦が登場し実の子琉晴の写真を見せる。病院側は早い交換を提案してきたが揉め
そうだ。

あとは淡々と解決に向けて話しが進んで行く。気になったのが2つの家庭の対比である。
何から何まで野々宮家の方が洗練されているように描かれる。生活レベルの差と言えばそれ
までだが演出をあざといと感じた。裁判の様子が描かれる。厳粛な感じがしたが真相が明らか
になる。悪意の第三者による作為的な取り違えだった。

良多の両親はアパート住まいで惨めな老後を送っている。老父は老人らしく根性が曲がって
いるが的確なことを言う。酒と博打が好きだったようだ。理性では良多もわかっているようで
大きくなればなるほど子は親とそっくりになると考えている。あとは感情的になっている
女性陣の抵抗だ。ネチネチと亮多がみどりに責められる。

両夫婦は 渓流のキャンプ場でしみじみと話し、この後子供の交換が成立する。新しい生活
は戸惑いもあるが不幸というほどではない。いったい何なんだろう。



映画 Mad Max (1976)

冒頭のパトカーの追跡からやや異常な感じがする。オーストラリアは警察のレベルが低い
のか。パトカーはV8エンジン5Lだがチューンアップされた600馬力仕様のインターセプターが
登場する。主人公は暴走族専門の特殊警察の若き警察官マックスで美人妻と幼児がいる。仲間
を暴走族に殺されたMAXは辞表を提出するが慰留され一ヶ月の休暇を取る。エステートワゴン
でバカンスに出た一家は暴走族に付け狙われ妻子がやられる。疑問なのは車による国内旅行に
固執した事か。海外にでも行けば良かっただろうに。無法ぶりはまるでメキシコのようだ。
修羅と化したMAXは特殊改造車を盗み出し暴走族を追い詰めてゆく。足を撃たれたMAXは
インターセプターに何とか乗車すると暴走族のドンのバイクを追う。相手を一台ぶっ潰したが
そのまま夜通し走り続ける。又一人見つけるが仲間を殺した男だった。MAXは仲間がやられた
のと同じやり方で男を処刑した。意外だったのは映画がこれで終わったことだ。これでは完成
度が低すぎやしないだろうか。



塩野七生 ローマ亡き後の地中海世界 3 新潮文庫

メフメト2世が夜中にハリル・パシャを呼び出して言ったとされる言葉、「私があなた
から欲しいと思うのはただ一つ。あの街を下さい。」これでコンスタンチノープルの運命は
決まった。

とても痺れる記述だが引用元は何だろうか。アンドレ・クロー著 メフメト2世 トルコの征服
王 辺りがそれっぽいのだが。



NHK BS ドキュメンタリー 援助 行き届かぬ中で生きる ?震災から一ヶ月のネパール?

2015年4月25日マグニチュード7.8の地震がネパールを襲う。建物が倒壊する映像が出て
くる。死者は8700人以上被災者は200万人以上と言われている。古都バクタプルが壊滅したが
壊滅前の映像が出てきて比較できる。地震発生から一ヶ月後の様子が映し出される。テント、
炊き出しが見られマスクの配布が行われている。首都カトマンズの空撮映像が出てくる。色
とりどりのテントが点在して見える。トリブバン国際空港にオスプレイが3機停めてあった。
援助物資が集結してくる。空港に留め置きされている物資も多い。

パクタブルは寺院が多く世界遺産に登録されているが遺産の5割が破壊されたという。
テントで生活する人々。町の日本語教師アミル・リビ(31)はテントを回り要望を聞く。
地元民のアミルの家は広場の裏にあるが妻は実家に避難している。壁には亀裂が入っていて
住めないので今は荷物置き場になっている。日本の救助隊の活動の様子がほんの少しだけ出て
くる。

アミルは語学学校の学生とボランティアを集め改善策を練る。王政が廃止されて7年目、政府
の動きが悪いようだ。米国の救助隊と国連が救助活動のコーディネートをし始める。震災から
4日後市民の不満が爆発しデモが起こった。山岳地帯への援助のため有志が自腹で食料を買い
出し救援に向かう。タタのトラックで6時間走る。沿道の被害の状況が映し出される。村へ着
くと村人が集まってくる。10日間放置されていたという。物資は早々と尽きてしまった。山岳
地帯の人口は1000万という。

5月12日二回目の地震が襲う。マグニチュード7.3。バクタプルも8割の家屋が壊滅状態と
なる。アミルはネパール工科大学の助手を呼んできてトタン製シェルターの作り方を教わる。
鉄筋を土に打ち込み、アーチ型の鉄パイプを3つ差し込んで骨組みにする。その上に繋げた
トタンを載せて完成。カトマンズにある妻の実家では第一子が誕生していた。ミルクを作る
アミル。

世界食糧計画の援助が本格化する。大量の物資を輸送ヘリで届ける。中国国境近くの村に
着く。400人が住んでいる。道は閉ざされているという。アミルはネパール赤十字社の支社を
訪れて資料を見せて援助を乞うのだが資材の調達に協力してくれると言う。アミルは孤児に
なった少年をどうするか相談を受ける。何とか受け入れ先を探してみようと言う。



映画 ディスタンス (2001)

カルト教団真理の箱舟による水道水テロから3年、追悼集会のことがニュースで流れる。
信者の活動も続いている。主人公達はテロ実行犯の家族である。実行犯は教団によって殺され
ている。つまり加害者遺族を追うという変わった切り口の映画だ。

音楽が無く生活音と会話のみでどんどん進んで行く。誰も知らないと同じ手法が使われて
いる。これだと見ている方は感情の高まりがあまり無い。ぶつ切りの冒頭部に偽装が仕込んで
あるらしい。加害者遺族の4人の日常が映し出される。4人は合流してRVで慰霊の為、湖に向か
う。会話はアドリブっぽい。車を止め4人は登山道を歩いて行く。敦、勝、実、きよかの面々は
去年も同じことをしていて1年ぶりの再会である。湖に花を流し祈るようにする。昼を食べた後
戻ってみると車が無い。盗難らしい。勝は善後策を練るが教団の人が上から歩いてきたので
相談をする。下山しようという実を説得して一行は使ってない山荘へと向かう。何かを背負っ
ているもの同士がこれから山荘で一泊するのだ。浮き浮きした感情とは無縁である。

時系列が飛ぶが家族が出家してゆくところが出てくる。きよかの夫はきよかが反対するも
聞かず出家する。勝の兄は医学生だが学業半ばで出家するという。勝は強くは止められなか
った。実の妻は黙って出家していてすでに洗脳されていた。敦だけ経緯が不明だ。

随分時間が経ったように思えたがおそらく翌朝5人は山荘を発ち途中で軽トラに乗せてもら
って人里までたどり着く。飯を食べ電話して電車で帰ってゆく。敦は実行犯の女性の弟という
触れ込みだが信者の男に嘘ではないかと訊かれたが否定した。何故なら女性の弟は自殺してい
たらしいのだ。冒頭に出てきた老父へのお見舞いも偽装であることがばれていた。刑事に事情
聴取されてまた何か答えている。警察は身元を掴んでいるはずだ。

敦が靄のかかる湖に百合の花を手向け父さんとつぶやいた。家族写真と木道を燃して
去る。二度と来ないつもりなのだろう。教祖の子供としての身元を隠して生きてゆくのだと
思う。



BS ドキュメンタリー ヨーロッパの労働市場 (2014)

人材派遣会社が東ヨーロッパの労働者を低賃金で西側に派遣する。会社は彼らを監禁する
こともある。デンマークの工場で働いていた労働者が突然解雇される。工場はドイツに移転
するという。そこで働くのはルーマニア人、ポーランド人、ハンガリー人、ブルガリア人だ。
莫大な利益を得るのは企業と人材派遣会社だ。

アイルランドの人材派遣会社の社長マイケル・オシェイはいち早く事業を始めたという。
元労働者は語る。この会社で働いたばっかりに怪我をしても労災がもらえず借金が膨らんだ。
ポルトガルの労働者が賃金不払いに遭う。調べてみると事業者はこの会社だった。不払いの
訴えに対し会社が行ったのは暴力による口封じだった。

ドイツ人は人材派遣会社のせいで働き口がない。再雇用されるには低賃金に甘んじなくては
ならない。若者はこういう社会構造に影響を受けている。あるデンマーク人労働者は地下鉄
工事の現場で溶接中爆発事故にあう。怪我をしたのが外国人の場合事故は隠蔽されるという。
あるポーランド人労働者は上から型枠が落ちてきたが事故は隠蔽されたという。国に返されて
終わりにされる。彼は訴訟を起こし係争中である。

取材班はブドメックスという会社を探すが会社は姿をくらませていた。この会社は賃金と
税金を踏み倒している。取材班は登記所で会社の中心人物を特定する。

あるポーランド人労働者はマイケル・オシェイの会社で働いたが契約書がキプロス語だったの
で内容が分からないまま契約したという。会社に対し批判的な報道をした記者パウロは拉致さ
れ批判を封じられたがその後真実を語っている。

取材班は公共事業の資金の流れをスウェーデンでつかむことが出来た。支払われたお金は
下請け、下請けと下るにつき時給が下がってゆく。未払い賃金の支払いを求める労働者を会社
は逆に破壊行為で訴えるがこれは失敗している。

ダブリンでマイケル・オシェイを内偵していた取材班は元幹部に接触し彼らが作っている
労働者データベースを得る。それには労働者の評価、労組への接触歴が記録されている。
マイケル・オシェイは高級ホテルのスイートルームに住んでいた。スウェーデン税務当局は社会
保障の掛け金未払いに対し会社を訴える。これにはマイケル・オシェイも姿を現し弁明した。
食品加工会社を解雇されたドイツ人労働者は家を差し押さえられた。フランスではオシェイ
の会社が敗訴した。最後に裁判所から出てくるオシェイに記者が突撃してオシェイの肉声を
聞くことができた。





P?5 の終段をK1056 J160 に変更した。これなら暴走はしないようだ。音は最近のアンプは
みなそうだが音響3Dプリンターの領域に達してるようだ。



BSドキュメンタリー アンネの家を訪ねて

ドイツに住んでいたアンネの一家はヒトラーが政権を握るとアムステルダムに移住した。
ペーパーバックのアンネの日記を携え世界から少女や大人達が見学に来る。見学者
は列を成しており待ち時間が1時間半という。ユダヤ人の老人がインタビューに応じ自身の
逃避行を語る。幸い米国に入国できたという。パラグアイから来た男性はゲイ・フェスティ
バルも楽しみにして来たという。何とパラグアイ軍事政府は同性愛者を弾圧したらしい。男性
はアンネの人生と自分のそれを重ね合わせて語っている。ドイツ軍人を父に持つ女性も登場
する。その父は自殺したという。亡命中のチベット僧侶、黒人もインタビューにコメントする
。一見平和を愛する人々が集まっているように見えるが一皮むいてみないと人はわからない。

1944年アンネフランクはドイツの秘密警察に逮捕される。

このドキュメンタリーの目的は一体何だろうか。人々が饒舌過ぎる。



映画 MAD MAX2 (1981)

前作と打って変わって文明が崩壊した世界になっている。北斗の拳が1983年なのでこちらが
元ネタになるわけである。MAXはトレーラーを持ってくることと交換にガソリン満タンを
要求して受け入れられる。何かちょっと変な気もする。約束を果たしてガソリンを手に入れ
たMAXは去ってゆくが、V8インターセプターも万能では無かった。敵にやられ吹っ飛ばさ
れる。武装力のイマイチ弱いロマのような集団の味方についたMAXがトレーラーを運転して
脱出をはかる。追ってくる敵の集団は武装していて機動力がある。マンガのような展開が多
いのだがアクションが スマートでないので見ていてだいぶ後味が悪い。

最後はどんでん返しがあった。トレーラーの中身は砂で猿のような子供が結局成長して
リーダーになりMAXよりもこちらが主人公だったようなナレーションがありエンディングを
迎えた。ちょっと常識を超える作りになっている。



映画 タッチオブスパイス (2003)

移住したり追い出されたりの大人の事情を横目で見ながらスパイス好きの少年が成長して
天文学者になる話。イスタンブールの香料商を営む祖父の元で育ったファニスはキプロス問題
で一家とともにギリシャに強制退去となる。題材は生々しいが醜い部分は隠され児童文学仕立
てになっているようだ。入国管理官が来ていよいよアテネに移住する。美少女のサイメともお
別れである。ギリシャでは逆難民はトルコ人の扱いを受けるようだ。学校に通うファニスは
反抗期を迎えるがギリシャの教会に通うようになりギリシャに同化する。祖父になかなか会え
ないファニスは両親に黙って一人トルコへと向かう。だが通報され家に連れ戻される。罰とし
てボーイスカウトに入れられる。そこではいろんな事を経験させられる。シェフとしての腕を
上げたファニスは叔父の婚約者に料理を教えるよう頼まれるがわざと究極のスパイスを入れ
させて縁談をぶち壊した。ボーイスカウトから天文学者になるまでの部分は省略されていた。

天文学者の教授になっていたファニスが休暇に入ろうとした矢先イスタンブールに残った
祖父がとうとう帰ってくるという知らせを受ける。ファニスは関係者とともに料理を作って待
つが祖父は向こうで倒れてしまった。飛行機でトルコへ向かうファニス。祖父を見舞うが街に
出て物思いに沈んでいる。サイメと再会し軍医の夫がいる事を知る。ファニスはボスポラス
大学の客員教授に採用してもらいトルコに残りサイメと一緒になろうと画策する。トルコ風呂
23に軍医を呼び出してサシで話し始める。何をするのかと思ったが親交を深めただけのようだ。
サイメは夫とともに遠くへ行ってしまった。

ファニスの父の言葉が意味深だった。ギリシャは遠くで思うもので帰ってみると幻滅して
しまう国らしい。


梅雨の日が続く



画像は+ボタンを使えば貼り付けられるのに気づいた。

(つづく)