FEEDFORWARD パワーアンプ

  1 最初の構想

  2 ZDRとの比較

  3 全部を含めたフィードフォワードアンプ

  4 LM380で実験

  5 ディスクリートで設計

  6 反転一段増幅アンプで実験

  7 よもやま話

  8 フィードフォワードアンプ一号機

  9 主アンプのNFB化

 10  アダプター方式の試み

 11 μPC2002革命

 12 何でもフィードフォワード

 13 続μPC2002革命





  FEEDFORWARD パワーアンプとして書いた回路がこの図である。今日ずっと考えていて
この図に到達したので、8月3日がFEEDFORWARD 記念日である。サンスイの回路は見たこ
ともないので、もしそれと違っていたらもうけものである。

  バランスアンプにしたのは、電圧出力のまま合成を行うため、ZDR風に終段の歪だけ
を対象にしたのは、補正結果の影響を受けないようにするためである。




  シミュレータで動作を調べてみる。





  これは極端だが、主アンプがクリップしても無歪補正アンプが補正信号を出しつづけ、
直線化している。

  ブロック図ではこうなる。補正アンプが主アンプと同じ場合でも、振幅が小さいため
歪はほぼ無視できる。




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  ここでZDRの図をみていただくと共通点がわかると思う。もう一台アンプを用意して誤差信号
を出力に交ぜたものがFEEDFORWARDであるが、ZDRは重ね合わせの原理のような考え方で 
信号を合成している。ここに独立したアンプを持ってきて合成しても同じである。

  ZDRを擬似フィードフォワードと呼んだのもこのことから見るとわかりやすい。


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全部を含めたフィードフォワードアンプ

  とそうこうしているうちに、全部を含めたFEEDFORWARD回路ができあがった。
副アンプはICパワーアンプである。



















 じつに大雑把な回路だが、付加部品が最小限ですむ。

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LM380で実験

手始めにLM380で実験してみる。これが改良したLM380反転アンプ。






  このようにして、正相、反転のゲインを揃えて結線してみる。発振してうまくゆかなかった。


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 ディスクリートで設計

さていよいよ本格的に作成を開始する。まずブロック図を書き動作を確かめる。このブロック図が
電気的に動くというのがなんとも革命的で面白い。





  誤差補正動作が確認できる。

  次に電子回路風のものを書いて確かめて見る。






  これもOK。

  実回路はこうなる。


  これを見るとバランスアンプを小変更したものがフィードフォワードであることがわかる。
バランスアンプができれば、フィードフォワードはすぐそばにあるのだ。


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 反転一段増幅アンプで実験

 そのまえに、反転一段増幅アンプで実験しようとしたが、



   単体アンプで歪みが2.5%くらいあり、なんか話が違うのでとりやめに・・・

  そういうことならLM380でこの方式ならいいかも思って試してみたが、LM380によって
随分歪み率がばらつくため、これも一時中断の憂き目をみる。


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 よもやま話

 フィードフォワードにはいやに梃子摺ってるように思うかもしれないが、これを片付ければ回路
パターンではもうやることは無いので、A型の私は余裕しゃくしゃくな気もする。

  音のためにやっているわけでもなく、動作を確認する実験なのである。音の良いアンプなら、
もうすでに結論は出ている。メタルキャンMOSの完全対称か、UHC−MOSの完全対称があれば
何の不満もない。方式はいちど組んでしまえば未来永劫無調整でいけるNFBである。

  J48のオールFETアンプで聴いているが、これにはまっている。プリがPRA2000なのに、オール
FETの味があるのである。音がひんやりと甘いのである。これがわかるようになると、音を聴くのが
楽しみになる。

  これまででこのように感じたのは、オールFETプリ + K1056を用いたディスクリートパワーモジュール
の時だけで、今回が2度目になる。オールFETプリはJ−FETのみを使っているから、どうやら涼しげな音の
特徴は、J−FETと日立のK135族特有のものかもしれない。

  どちらの場合も、しばらく聴いていて何日目かでわかってきたので、初対面で気づくわけではない。
ただし一度感じると次からは常に感じることができるので、違いは厳然と存在する。また他で求めても
得られることは無い。例えばK1529ではぱっと空間に広がる超微粒子の音が感じられるが、温度感
が違う。ソニーのJ18は無色透明で歪み感の無い音になる。UHC−MOSも違う。

  オーディオの楽しみのひとつには、次もこの音が聴ける!という期待感が重要で、もしもこういうお気に入
りのアンプが無くなってしまったら、ちょっと落胆ものなのである。


  付け加えるとHMA9500IIにはこういう音質の特徴はあまりない。


  よもやま話のついで

瞬間切り替えテスト

  アンプの瞬間切り替えテストは難易度の高いテストと思う。しかし音の違いを検証するのにわざわざ
このような難しいテストを用いる必然性はない思う。

  人間でさえ初対面では相手がどんな人間かを見極めるのは難しく、ましてや双子の瞬間切り替えで
やられたらついだまされてしまうのではないだろうか。

  やはり数日か数ヶ月いっしょに生活してみないと人間のことはわからないように、アンプも数日聴いてみ
ないとこの音が好きかどうか、自分にあっているかどうかはわからないと思う。

  とくにエージングが必要な機器(バックロードスピーカーとか超怒級アンプ)の場合は数ヶ月見たほうが
良い結果が得られる。

  オーディオ機器の音質を調べるには私の経験からも数日テストが良いと思う。

ダブルブラインドテスト

  アンプの音質差を判定するのに何故人間のサンプル数を増やす必要があるのだろうか?

  その答えは、

    故意を排除する為    ・・・・   ダブルブラインドテスト

    正確さを増すため    ・・・・   サンプル数を増やす

  のだと思う。

  そして十分大きなサンプル数で、ダブルブラインドも完璧に行われた結果何がわかるのかというと、

         アンプA、Bの音質の差がわかる人の正確な割合

  がわかるというだけの話である。

  得られたこの数値を何に使うのか?

  営業に使うことができる。例えば新技術を導入した新製品Aと旧製品Bの音質の差がわかる人の
割合が、x%の場合、その結果によっては導入を断念するというふうに用いる。

  社会学の研究などに使える。

  例えば英国人と日本人のアンプの差をききわける能力の差とか、職種・環境によって値がどう違って
くるのかとか、いくらでも論文の種にすることができるだろう。

  オーディオの研究に使えるだろうか?

  使えそうな例  オーディオを愛好する人200人くらいを対象として、

   スピーカー A,B 
   アンプ A,B
   CDプレーヤー
   スピーカーケーブル
   ラインケーブル            
   電源タップ
   電源ケーブル
   コンセントの極性
   スピーカーケーブルの方向性
   アンプ内の抵抗の方向性    の差が分る人の割合
   
   などを調べ、その割合を数値で示すことができる。 

   極端に小さい値のものはやはりどちらかというとオカルト話の類かと推測することができる。

  役に立たない例

   アンプAとアンプBの音質差についてこの実験を行った結果が5%となった。

   残念ながらこういう実験の検出感度は実験ノイズで規定されるので、微小な差を検出するのには
全く不向きなのである。

  したがってある程度大きな差でないと議論の対象にはできない。アンプAとアンプBの微妙な音質差
についてはこの方法では全く何も結論づけることはできないのである。

  オーディオ機器の音質をその場で調べるには、客観性を期す場合、耳のいい人3人くらい集まれば十分
(3人テスト)。耳の良くない人を入れてはだめ(そんなことは当然でしょう)。

  客観性の保証はないが、当事者一人でも差がわかるなら別にそれで良い(一人テスト)。



  あー長かった。読んでもらえたでしょうか?


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  フィードフォワードアンプ一号機

  ここまでですでに作っては壊しでかなり消耗してしまった。いきあたりばったりでは、
未知のトラブルにいろいろ遭遇するのが楽苦しい。A型の私としてはノーミス、ノートラブル
ですぱっといきたい。ここは回路図上で検討しつくしてから工作にかかるとしよう。

  じつはこの過程で無帰還の主アンプは完成し、新型シャーシ「甚平」に装着可となっている
のである。副アンプに悩んでいるのである。



  主アンプと副アンプを同じにする。副アンプにNFBをかける(無歪アンプが前提なので)。こうすると、あとで
バランスアンプにしても良いのでそういう構想で部品集めなどしていたのである。しかしここへきて急に副アンプ
をつくるのが面倒になってしまった。どうせ出力インピーダンスを抵抗で調整するのなら副アンプはなんでもいい
はずである。ならば、オペアンプを1個使う下図の回路が簡単で良い。



  と思いつつなかなか作れないでいると、壊した基板から部品取りをしていて、箱の中から基板を発見。しばらくして
何であるか判明。ディスクリートパワーモジュールVであった。補正アンプに採用してみる。さらに工作が簡単になる。



  私がもっとも恐れるのは、一基板に2回路組んで、そのうちの一回路失敗することである。だからなるべく、
独立させた構成でやることが多い。

  実はこのように1基板に2つのパワーアンプを仕込む予定だったが、1個目が大変だったのでよしてしまった
のである。

  


  フィードフォワードについてはラジオ技術の藤井氏がよく研究し、アンプを発表されている。そうその記事を読めば、
電流出力なら並列合成で、電圧出力なら直列合成でと書いてあるのだった。

  足し算引き算で補正を行うから、一応フィードフォワードだが生理学の分野でいうところのフィードフォワードとは
違っている。一度覚えこんだ動きは小脳の働きによってフィードバックなしで再現される。以前に長谷川ひろしが自宅では、
目の見える人と遜色ない速さで動けるという趣旨のことを言っていたのがとても印象に残っている。

  アンプのフィードフォワードは一度覚えた歪を次からは自動補正するわけではなくて、その都度実測して補正して
いるわけである。まあそうでないとちょっと実現は難しい。

  もしやるとすると、初回に特性を実測し、そのデータを元に逆の歪をもったフィルターを前置すればよいことになる。
デジタル化すればできなくはないであろうが製品ではまだ見かけない。

  技術上の問題点としては、アイドリングが変わるとクロスオーバー歪の発生も違うだろうし、温度による
動作点の変化にも対応できないだろうしと、山積みの状態かもしれない。

  結局、真のフィードフォワードとやや違うが、実測型フィードフォワードと考えればいいかもしれない。



副アンプ


主アンプ


主アンプ


  出力インピーダンス(1kHz)

    主アンプ  3.9Ω
    副アンプ  0.02Ω



  例によって誤差信号をモニターしながら調整するが、1kHzをうまくキャンセル
できなかった。今のところ主アンプによってできたりできなかったりする状況で解決
策はない。今回はあきらめて、副アンプに3.3Ωの抵抗をかませバランス接続に
進む。






  これがその特性。良い結果とは言えないが、発振もなかったし一応できることはわかった。
  やりかたはこれで良いだろう。


主アンプのNFB化

  主アンプをNFB化してみた。


  主アンプ


  このようにものすごい低歪みになってしまった。上下対称回路のスイングレベルの広さは
少々驚きである。




  このように1kHzはかなりキャンセルできるが、2次歪みより小さくできない。
案の定フィードフォワードでは、かえって歪みが増加した。


アダプター方式の試み



  こういうのを作って、BTLにしたりフィードフォワードにしたりするのだ。最初にやるべきだった
かもしれない。成功をあせりすぎたのか?

  VR1を0Ωに絞るとBTLになる。ちょうどよい位置にするとフィードフォワードになる。つまりBTLと
フィードフォワードはアナログ的に連続しているのだ。

  これと類似の状況は、ODNFとA級プッシュプルにも当てはまる。副アンプの存在しないD−NFB
とZDRにはこのようなことはない。

  エネルギー的な問題を解決するためには、副アンプが必要という考え方があるが、私はそうは思わ
ない。上下対称回路であれば、誤差信号の振幅が抑えられるので副アンプが無くとも、特に問題はない
ような印象がある。

  またNFBアンプは仕上がり出力の数倍の出力余裕が必要という考え方もあるが、私の印象では
NFBアンプは電源の限度まできっちり使いきれているように感じている。



 中断しているうちにLM380が増えたのでこちらもやってみる。



  位相反転ミキシング回路にLM386を採用した。


  原理どおりの図は書けたが、これも確認すべき事項が盛りだくさんで、実験成功までは遠い道のりの感がある。

  まずLM386がユニティゲインで使えるかどうか、なんとか進相補正30pで動作した。
正相

反転


 主アンプを作り歪みを測定する。入力Cは無くてもやはり動作した。

 次に主アンプの誤差信号が作れるかどうか、これはうまくノイズレベル程度まで打ち消すことができた。

  LM386出力


  つぎに副アンプを同じように作り結線した。残念ながら激しく寄生発振する。いやあとても
難しい。


   長い中断の後突如としてひらめいたのがこれである。これで理論的にも実用的にも完成にいたった。


 11 μPC2002革命

 12 何でもフィードフォワード

 13 続μPC2002革命